『７年前の日記です。』

２００２年６月３日　大熊あゆみ　「プラニー」

先週、チェンマイ市内のスラムで一人のエイズに感染していた山岳民族の女性が亡くなった。夫はすでにエイズで数年前に亡くなり三人の子どもたちが残された。その末娘である中学一年生のプラニーちゃんは偶然にもうちの子どもたちと同じ学校に通っていた。プラニーちゃんの姉は若くして結婚し、兄は中学の卒業と同時に仏門に入ったので母親が亡くなった後、スラムの小さな家にはプラニーちゃんと亡くなった母親の恋人の二人が残され、暮らすことになった。母親の死後すぐに学校から、就学を続けさせるためにバーンロムサイで預かってくれないかとの相談があった。このままスラムにいたら周りの環境に流され、お金を稼ぐ手段として売春をするかもしれない。「バーンロムサイに行きたい！」と言う本人の強い希望をくんで、預かるなら卒業までと言わず、他の子どもたちと同じように家族の一員として育てましょう、との結論が出て、さっそく葬儀の翌日ウェウ先生がプラニーちゃんを訪ねに行った。

整備されていない沼地の中の、貧しい家が彼女の家だった。「メー美和からOKが出たわよ、いつでもいらっしゃい！」と言うウェウの言葉にプラニーちゃんはとても喜び、その場で話が進み、早くも月曜日（今日）に親戚のおじさんと学校の先生とバーンロムサイをまずは見に来ることになった。バーンロムサイでも子どもたちを集め「新しいお姉さんが来るので仲良くしましょうね」と話し、女の子の部屋にベッドを移動し、みんなで彼女を迎える準備をしていたのだが、、、

今日学校に迎えに行ったウェウ先生に学校の先生から「今朝になってプラニーが、もうバーンロムサイには行かれない、と言ってきたの、お母さんが死に際にここに（スラム）居なさいって言っていたらしいく、、、」今日のプラニーちゃんは学校でウェウ先生を避けるように姿を隠している。三日前にはあんなに喜んでいたのに、あんなにバーンロムサイで暮らしたいと言っていたのに、、、、
明日、プラニーちゃんと一対一でゆっくり話せる機会を持つためウェウがもう一度彼女の家を訪ねる事になった。（旧スタッフ　大熊あゆみ　記）

「その後、、」
翌日、ウェウが彼女の家を訪ねて行ったが、プラニーちゃんは出てこず、叔父さんがともかくここで暮らし続けると決めたとウェウに伝えた。親族の元から強引に引き離すことは法律上出来ず、この話はそこで立ち消えてしまった。プラニーちゃんはもう１９歳、どんな人生を歩んでいるのだろうか、、、バーンロムサイに強引にでも連れてきた方が良かったのか、、、

開園した１９９９年から今日までバーンロムサイに入園した子どもの数は４４名、１０名がエイズで亡くなり、メイヤイが叔母に引き取られ、ゴルフがバンコクの父親のもとに行き、ムーが国立孤児院に戻り、５月２５日からポンとゴイがメーチャン村のフォスターファミリーの家で暮らし始め、グライが寄宿高校にこの５月から入学したので、現在バーンロムサイで生活をしているのは２８名。

振り返ると本当にいろいろなことがこの９年半の間にありました。バーンロムサイに来た日の子どもたち全員の姿が目に焼き付いています。先日ヌンがバイクにまたがり高校の制服を着て帰ってきた姿を見て、あの子がバーンロムサイに来た時の事を思い出しました。３日間リュックサックを背負ったまま、「メーメー」と門の方を向き泣き続け保母さんたちを困らせていました。その子が背はとっくに私を追い越し、立派な（？）青年に成長しつつあります。

こうやって一人ずつ、巣箱から飛び立ってゆくのでしょう！彼らを待ち受けている社会が彼らを気持ちよく迎えてくれることを祈っています。名取美和

7年前、お丸にまたがるビー（右）　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　大きくなったビー！

『バーンロムサイ　イベント情報』

東京では、新宿高島屋　「生活雑貨ショップ　マ　ビエス」でのイベントが6月2日まで、代官山　＋INGでのイベントは4日まで（6月2日は代表名取美和のお話し会があります）、そして12日からは六本木アクシスビル　サボア　ヴィーブルにて恒例の「バーンロムサイ展」が始まります。7月、8月もイベントは続きます！
そして鎌倉ショップもこの夏に向けて商品がさらに充実。皆さま是非この夏もバーンロムサイのイベントへ、そして鎌倉ショップへ遊びにいらしてください。詳しくはバーンロムサイホームページ（https://www.banromsai.jphttps://www.banromsai.jp/information/）をご覧下さい。