写真日記
もうすぐ18歳
ピー・ダーオがバーンロムサイで暮し始めたのは4年前の7月。バーンロムサイの子ども達と同じ学校に通っていた彼女は身寄りがなく、行き場を無くしていた。それでもできれば、今の学校に通い続けたい。そうしたことから、縁あってバーンロムサイにやって来た。私がまだ、バーンロムサイで働き始めたばかりの頃だ。
ボランティアスタッフの新人だった私と、子ども達の中で"新人"だった彼女。なんとなく、親近感を持って接してきた。まだ全然タイ語が喋れなかった私に、易しいタイ語で話しかけてくれ、面倒くさがらずにいろんなタイ語を教えてくれた。
いつの頃か忘れたが、彼女とお酒の話をした。タイの法律では18歳から飲酒が許される、という話だった。それで私は彼女と「18歳の誕生日に一緒にビールを飲もうね」と約束したのだ。18歳は3、4年先。ちょっと遠い話。その頃はピー・ダーオがもしバーンロムサイで暮していなくても。私が日本に帰っていても。きっとその頃に、私はピー・ダーオに会いに来るよ、と。
特に深く考えなかった未来の約束を、彼女はずっと忘れていなかった。私がバーンロムサイのボランティアを終えるときにも「約束を忘れないでね、メーさき」とピー・ダーオは私に釘を刺し。それからたまに会う時にも「あと2年・・・」「あと1年・・・」と彼女は数えていた。
5月に彼女に会ったとき、彼女は私に言った。「メーさき、とうとう来月だよ!」
そして今月、6月。彼女は18歳の誕生日を迎える。約束をした時には考えてもいなかったことだが、私は今、チェンマイで暮し、彼女との約束を無理なく果たせる距離にいる。約束の「ビール」は、約束のきっかけ。18歳というのは、国立孤児院であれば卒業の時だと聞く。18歳を過ぎたら、社会に出て生活しなければならない年齢。そんな節目だから、ピー・ダーオにとってのその節目をお祝いできたらいいなと願って、約束をしたのだった。
当時中学生だったピー・ダーオは、今は高校3年生。すてきな女性に成長している。数年越しの約束の日がもうすぐそこ。なんだかこそばゆく、とてもうれしい6月。ピー・ダーオの誕生日は来週末だ。
『バナナに巣作り』
上のバナナの写真は、タイ人のとある知人宅にお邪魔したときのもの。庭のバナナの木(厳密に言うと「木」には分類されないらしいが)に大きなバナナの房が重たくぶらさがっていた。見ると、そのバナナの巨大な房の中央に、埋め込まれたような鳥の巣が。中を覗き込むと小鳥の雛がいて、手を伸ばすと親鳥と勘違いして、懸命に嘴を開いてエサを欲しがる。
まだ実が軽い頃は、人の手が届かないところにあったそのバナナの房と巣。バナナが実り、重くなり、垂れ下がり、人の手の届くところまで来てしまった。きっと親鳥も計算違いに驚いたことだろう。知人によると、残された1羽の雛(アップ写真にちらりと写っている)は、その後ちゃんと巣立ったそう。
にしても、これだけの量のバナナが庭にできてしまうタイの暮らしに改めて驚く・・・
小泉 幸季|2009/06/14 (日)
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