写真日記
秋田を訪れて思ったこと
日曜日から昨日まで秋田・小松クラフトスペースでの展示会の準備と立ち会いに行ってきました。羽田より約1時間、鳥海山を眼下に日本海に抜けると間もなく秋田空港、自分にとってはるか昔、中学校の修学旅行以来の秋田訪問となりました(その時は「なまはげ」を見物しながら「きりたんぽ鍋」を食べたという貧しい記憶しか残っていないのですが...!)
秋田市内に入り、小松クラフトスペースへ。正直なところ、秋田駅のまわりがとても静かなのに少し驚きましたが、特に日曜日は家族連れが郊外のショッピングセンターやモールに行ってしまうので、駅のまわりは人気が少ないとの事。しかし、古くから有る商店街はやはりさびれてきており、シャッターを閉めている店が軒並み続出しているらしい。確かに、後に通ったお堀沿いの道では、(それはちょっとチェンマイのお堀端の道を連想させるのですが)、お堀に美しい睡蓮の花が夏の光を受けて咲き誇っているのと対照的に、道の反対側には静かな商店街が影となりたたずんでいました。秋田もやはり衰退の一途をたどりつつある地方都市なのだろうか?
小松クラフトスペースの先代社長・現ご隠居の正雄さんと奥様、そして現社長の和彦さんがバーンロムサイの初期からご支援を続けて下さっており、今回で6回目、2006年より4年連続のバーンロムサイ展を開催して下さいました。初日にはこのお店の常連さんをはじめ、取材の記者の方も含め、多くの方々が来て下さいました。また特に今年は、バーンロムサイのクマに秋田のクリエーターさん達が装飾をしてくださり展示する『旅マ(旅するマーケット)のクマの着せ替えごっこ展』が21日より3日間、開催されるとのこと。お客様の中でも、洋服を作られたり手芸をされている方々が多くいましたが、秋田のクリエイティブな意気込みを感じました。
小松社長は、先日まで行なわれていた同じく秋田県・大館市の「ゼロダテ」展というイベントを訪ねたそうです。このイベントは東京芸大の准教授の方が中心となり、町のあらゆる人々が参加して「廃墟と化した」商店街のスペースを利用しアート作品を展示しようと試みる、2007年より3年続いているイベント。「中には作品というよりも、廃墟の迫力の方が勝っている展示も...」と、和彦社長は笑いながらパンフレットを見せて下さいましたが、街の衰退化に危機を感じ、街の良さを見直そう、自分達の力で人を呼び込もう、という若い人達を軸にした活動が行なわれている事に、私の知らなかった「地方の底力」を感じました。
そして秋田の自給率は160%とのこと。確か名取は、北海道・帯広の自給率は(驚異の!)1200%、時には2000%と言っていたと記憶していますが、対するわが街、東京都はこれまた驚異の1%、、。 (平成19年度/農水省調べ:カロリーベース)100%を超える秋田の自給率も実に素晴らしいものと思いました。実際、ご隠居ご夫妻がご馳走して下さった秋田で獲れた夏野菜や魚介類は大変おいしく、東京では決して手に入れる事の出来ない新鮮なものでした。このような自然の恵みあふれた地域が見捨てられる事なく、また、フォーマットにのっとった都市化がされるのではなく、その豊かさと個性を大切に残していってくれたら、、、と(僭越ながらも)思う一時でもありました。
小松社長自身も、「海外だけじゃない。まずは国内のこと、自分のまわりにある問題から解決してゆかないと...」とお話していましたが、このような若い世代の方達の力強い意気込みを頼もしく感じつつ、あるいは励まされつつ、短い秋田の滞在を充実したものにしていただきました。
この春に「SABAI」での展示会のため愛知県・常滑市を訪れた時もそうでしたが、地方の展示会では東京に住んでいるとなかなか接する事の出来ない、街に対する熱のこもった思いや、クリエイティブな力を感じる事が多く、また、大変良くして下さるギャラリーのオーナーの方々から新たに学ぶ事は数知れず、私にとって毎回とても貴重な体験となっております。今後ともなにとぞよろしくお願いいたします。
佐藤 くみ|2009/08/19 (水)
前の写真日記:おしゃべり
次の写真日記:コンテンポラリーダンス