写真日記
ヌン
今年の5月から市内の工業高校へ通っていたヌン。しかし、彼はその高校での細かいシステムが理解できず選択授業を選ばなかったり、また友だちに誘われるがままに、授業をさぼり、喫煙し・・・、結局退学することになりました。昨年、ヌンの進学を話しあった際、タイ人スタッフは「今のタイの学歴社会の中で、中卒では就職時に大きく差がでるので、高校だけは行かせたい」と言い、迷った末私たちも同意しました。しかしヌンの場合は、「高校」という場所に行くには無理があったのです。それを今回の「退学」という状況を受け、私たちは子どもたちの身の丈にあった進路をきちんと考えるべきだったと、反省しています。
しかしこのヌンのことがきっかけで、今までせめて高校だけは行かせる方が子どもたちのためになるという学歴社会思考だったタイ人スタッフたちが、無理して高校へ行かせ何も身につかないまま無為に3年間を過ごすよりも、もっと専門的なことを学べる学校に行き、早くから職業訓練をし、きちんと手に職をつけ自立するという道を作ってゆくようにしようと、私たちと同じ気持ちになってくれたことは、何よりも嬉しいことでした。もちろん、勉強が好きで大学まで行って勉強したい子がいれば、行かせたいです。これから一人一人の子どもたちの将来を順々に、タイ人スタッフと一緒に丁寧に話しあってゆくことになりました。
学校を辞めることになったヌンは、相当落ち込みました。でも彼にとっては良い機会だったと思います。社会に出たらもっと辛く厳しい現実が待っていて、そして誰も手助けしてくれません。自分で切り開いてゆくしかないのです。
一昨年、まったく予想外に、そして誰よりもはっきりとヌンが「自動車の修理工に僕はなりたい!」と意思表示して私たちを驚かせたその場面を今でもはっきりと覚えています。彼は本当に素直で優しい子です。そして彼の修理工になりたいという気持ちは変わっていません。たくさんあるコースの中でまずはバイクの修理をきちんと覚えたいと、10月半ばから3カ月コースの専門学校に通うことに。その学校は必死に手に職をつけようとしている人たち(大人も受講できる)が集まる所なので、たくさんの刺激も受けるでしょう。コースが始まるまでハンドンのバイク修理屋さんで手伝いをしているヌンの顔は、高校に通っていた時よりずっと晴れやかです。
今日の子ども会議で彼は嬉しそうに、新しい学校で技術を学ぶことを皆に報告していました。すっかり立ち直り、バーンロムサイのバイクと車は全部自分が修理すると張り切っています。ヌン、その時は修理代おまけしてね。
麻生 賀津子|2009/09/18 (金)
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