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行旅死亡者

年間3万7千人ほどの日本人が自殺、ほぼ同数の行旅死亡者(孤独死)がいるとNHKニュースで報道されていました。バーンロムサイ・ジャパンの事務所のある逗子市の人口が7万人強、毎年逗子市が一つ消滅していると言うことになります。これは驚くべき数字です。

行旅死亡者とは昔で言う「行き倒れ」の事。バブル最盛期、地方から出稼ぎに来た人たちが、年齢的にも仕事を見つける事が難しく、まただからと言って縁遠くなってしまった地方の実家にも帰りづらく、妻や子どもたちにも見はなされ、都会のアパートで世間との付き合いもなく一人死んでゆく。日本の経済発展の縁の下の力持ちであった彼らが社会からじわじわと追いやられ居場所が無くなってしまった上にこの不況。また昭和30年代の団地時代の幕開けに団地に入居した人たちが高齢化、子どもたちも独立し周りに知り合いもいなくなり、一人で死んでゆく。人様には面倒をかけたくない、社交下手と言う日本人特有の背景もあるのでしょう。

結婚したくても経済的な理由で出来ない人たち、そもそも最初から結婚したくない人たち、そして離婚した人たちと言ったひとり者が確実に増えています。この現象は当分続くでしょう。一人暮らしをするということ自体に問題がある訳ではありませんが、社会は家庭を基本に地域社会があり、雇用形態は終身雇用と言う前提で成り立っていたわけですから、仕組みそのものを見直す必要のある時代になった事だと思います。戦後日本人皆が「経済優先」で「経済大国」を目指していた頃から政府がその後を見越した政策を考えておく必要があったのに、何も手を打たなかった。国民も自分は中流、この景気は未来永劫に続くと言う幻想を抱き、政府も国民も目先のお金に踊らされ「宴のあとに必ずやってくる落ち込み」まで考えが及ばなかったのでしょう。今回はその場しのぎの政策では乗り越えられない大きな問題だと思います。
 
 
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「せっせと働く蟻たち」

 
 
自殺者、孤独死を選ばざるを得なかった人たちが日本社会の仕組みから追いやられてしまったと言う結果なのでしょう。

少なくともタイの田舎では現時点では考えられない事です。「親孝行がしたい」と言っている若者、また実際に親孝行をしている多くの人たち。働かざるを得ない親たちは子どもを祖父母や親戚知人、お寺に子どもを預けたり(日本のように利益優先主義の寺が保育園を経営しているのとは違います)、とても安い保育園も沢山あります。日本のように保育園の規制が厳しくありませんので、園児7名以下でしたら比較的簡単に施設を開設することが出来ます。そしてタイの国民性は日本人に比べ全てに対して「開けっぴろげでおおらか」。日本の保護者のように何かあった時の責任を他者(学校や幼稚園、国や行政)に押し付けず、自分たちに降りかかった災難と受け止めると言う国民性も幸いしているのだと思います。
 
 
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「子猫の昼寝」

 
 
年間7万人強の自殺と孤独死、なんともやりきれない数字です。

名取 美和|2010/04/10 (土)

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