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ケマラートへ行き思ったこと。/「モンネ・ポルト」のバーンロムサイ展

『ケマラートへ行き思ったこと。』


先日、タイの東北部、ウボンラーチャータニー県のケマラートという地域で、HIV陽性者の支援活動をしている日本のNPO「シェア(=国際保健協力市民の会)」を訪問し、活動に参加させていただきました。ケマラートはタイとラオスの国境地帯、メコン川沿いにある、小さくのどかな街です。

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<メコン川。向こう岸はラオス。多くの人が行き交いしている。>


バーンロムサイのあるタイ北部と同じく、これと言った地場産業がないため貧困家庭が多く、出稼ぎでバンコクなどの都市へ出かけてHIVに感染、家族(主に妻)にも感染させてしまったり、川を渡ってラオスからやってきた女性達が、セックスワーカーとして働き感染してしまうなど、タイの中でもHIV/AIDS感染者の多い地域です。シェアはここでタイ人スタッフを中心に、HIV陽性者同士が助け合い、薬を飲み続け、定期的に病院で検査を受けることが出来るよう支援し、HIV感染予防の啓発活動や保健衛生の指導を行っています。

1日目は、毎月一回行われるHIV陽性者グループの定例会を見学させていただきました。ケマラート郡とナーターン郡に住んでいる50人以上の陽性者たちが病院に集まり、血圧測定や血液検査などの健康チェックの後、定例会が始まりました。まず、この病院の感染病課のセンター長さんよりお話があり、「薬の耐性が出来てしまっている人が増えてきている。薬を飲んで治療すると決めたら、絶対に飲み続けること。励ましあって薬を飲む習慣をつけること」とのこと。続いて、3人のリーダーのうちの1人が、今日のテーマについて説明を行い、その後4つのグループに別れて話し合いを始めます。今日のテーマは「今、抱えている問題と、その解決方法について」。どのグループでも「家族が感染していることに理解を示してくれない」「薬の副作用の問題」「定例会に参加したくとも交通手段がなく不便」「周りの人に告知出来ない:まわりの目が恐い」「お金が無い:職が見つからなかったり、仕事を断られる」「リーダーが不足している」などの問題について話されていました。決定的な解決策には至らなくとも、どのようにすれば少しでも問題が解消されるか、参加者は自ら言い聞かせるように自分の考えを仲間に伝えていました。そしてまた全員で集まり、問題と対応策、今後の課題のまとめに入ります。


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<全員で、そしてグループで自分たちが抱える問題と解決策について話す>

お昼を挟んで午後からは、各自お医者さんから診察を受け、薬を受け取ります。また、リーダー達の運営会議がシェアのスタッフと一緒に行われていました。リーダー達は全員ボランティアとのことですが、活動に大きく時間と労力を要するのに関わらず、自分たちの問題としてポジティブに役割を捉え、そして積極的に活動をしていました。

2日目は、3人のリーダーとシェアのスタッフによる、定例会に参加しなかった人の家への訪問に同行させていただきました。このような家庭訪問は週に2、3回行われているとのこと。今日はケマラート市内から20Kmほど離れた村で、老齢の祖母と住む34歳の盲目の男性、同じ村の30代後半の女性陽性者の家、またさらに遠い村に1人で住む56歳の男性、そして祖父母と一緒に住む12歳の女の子の家を訪ねました。最後に訪ねた女の子は別として、いずれも距離の問題で定例会に来れなかったり、薬を決まった時間に飲むための自己管理が難しい状況にある人たちでした。リーダーやスタッフ達は、役場へHIV陽性者対象の社会補助金の申請が自らできないメンバーに対して代理申請を行い、HIV陽性者が社会補助金を受けられるように支援しています。訪問の際にリーダー達は、最近の健康状態を尋ね、薬をちゃんと飲んでいるかどうか、そして次回の診察予約日と薬の数を確認します。また、今一番悩んでいることについて相談を受けるなど、陽気な雰囲気で受け答えをしながら仲間を励ましていました。

12歳の女の子は、バーンロムサイにいる子どもと同様、一見健康そうなかわいい子どもでしたが、両親が亡くなった後、祖父母や近所に住む親戚が彼女を育てているとのこと。明るく家族と話しをする彼女を見て、理解有る肉親や親戚がいることは彼女にとって本当に幸せなことと思い、その家を後にしました。

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<家庭訪問では、ちゃんと薬を飲んでいるか、そして副作用についても話を聞く>

今回は私が同行するため、シェアの車にて全員で訪問をしましたが、普段は各リーダーやスタッフが個々に訪問者の家を訪れ、なるべく陽性者と解るような行動を慎んでいるとのこと。また、昨日の病院の定例会でも、一般の患者さんの目に止まらない入口から会場に入れるような配慮がなされており、やはりHIVに対する偏見の根強さを感じざるを得ませんでした。

今回、シェアの活動に参加させていただいたりお話を伺い、陽性者同士が互いに励ましあって、薬を飲み続けることの重要さを痛感しました。一生毎日、決まった時間に薬を飲み続けることは実に困難なことと思います。バーンロムサイの子どもたちは、小さい頃から皆で同じ時間に薬を飲むことが習慣となっていますが、大人になって自立し、ホームを離れて自分の生活する場でも毎日薬を飲み続けるには、並大抵ではない自己管理の努力が必要になってくることと思います。挫折せずに薬を飲み治療を続けること、そのための助け合いのネットワークを作るシェアタイ事務所では、長期間にわたるスタッフの人材育成の結果、タイ人スタッフが自ら活動を運営し管理することができるようになったため、タイの法人財団として陽性者の支援を続けてゆくのだそうです。

バーンロムサイの子どもたちもこの先、毎日きちんと同じ時刻に薬を飲むことが続けやすい環境に身をおくとは必ずしも限らないと思います。しかし、ここで培った習慣を守り、また今後出会う同じ陽性者たちとも助け合い、コミュニティのリーダーとなって頑張っていってもらいたいと、改めて思った今回のケマラート訪問でした。そして早く、HIVを根絶する薬が出来ることを祈るのみです。

※今回大変お世話になったシェアのコーディネーター、広本さんに大変感謝しています、どうもありがとうございました。

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<シェアでは、陽性者が少しでも自分たちで生活費が稼げるよう、仲間うちで教えあってこのようなカゴを作り、販売する支援もしていました。>

佐藤くみ


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『「モンネ・ポルト」のバーンロムサイ展』

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4月9日(土)より長崎県波佐見町のモンネ・ポルトでバーンロムサイ展を開催しております。
やきもので有名な波佐見町、以前やきもの工場だったところをリノベーションしたギャラリーです。

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9日の初日には、沢山の客様に来ていただき、みなさんにバーンロムサイのオリジナル商品を手に取っていただき、ご購入していただきました。
子どもたちが描いた絵を使った商品や、古布をポーチ、プリント柄が特徴のパレオ、これからの季節に適したコットン、リネンの洋服などなど、素敵なスペースで展示販売しています。
4月24日(日)まで開催しておりますので、お立ち寄りください。
同じ敷地内には、カフェ「mooks」やインテリア雑貨展の「はなわくすい」もあります。

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期間: 2011年4月9日(土)~4月24日(日)
11:00~19:00  ※水曜定休
場所: 〒859-3711 長崎県東彼杵郡波佐見町井石郷2187-4 monne porte(モンネ・ポルト)
TEL: 0956-85-8155
ホームページ: http://monne-porte.com/monne-porte.com/monne_porte.html

久我昌世

佐藤くみ/久我昌世|2011/04/13 (水)

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