新年あけましておめでとうございます。
毎年、世界のどこかで自然災害が発生、世界のどこかで戦争をしています。
昨年2011年、日本では大地震がそしてタイでは大洪水が発生しました。地震や津波は人間の力で止めることは不可能ですが、それを最小限にとどめる努力と迅速な被災者援助は出来るはずです。治水と言う事を考えると今回の洪水も人災と思われる部分もあるかと思います。また戦争の大きな原因である不平等は、みんなが分かち合うべく努力をすればこれほど多くの戦いにならずにすむはずです。そんな当たり前の事、みんなわかっているのに、戦争のない年はありません。
バーンロムサイが開園した1999年、最初のクリスマス会は訪ねてくださる方も少なく内輪で祝いましたが、昨年のクリスマス会には多くの方たちが参加してくださいました。これだけの歳月がかかりましたが、バーンロムサイの周囲ではまったくと言ってよい程、HIVやエイズに対する差別はなくなりました。努力と言うよりも、時間が差別や偏見を少しずつ取り除いてくれたのでしょう。
そして先日目にしたある報告書には、2010年タイ国内でHIVに母子感染して生まれてきた子どもの数は4人とありました。今では母親が抗HIV療法を受けていれば生まれてくる子に感染させてしまう事はほぼありません。開園当時タイ国内には7万5千人の母子感染孤児がいた事を思うと、十数年の歳月を要しましたが、この数字までにたどり着たと言う事は大変喜ばしいことです。しかしその反面HIVに感染しても薬があるから大丈夫と考える人が増えてきた事もその理由の一つなのか、青少年の間では感染者が増えています。
バーンロムサイでは学費と生活費を支援することを条件に6人の子どもたちが昨年秋からバーンロムサイの外で暮らし始めました。それにはタイ国内の施設で暮らす子どもたちは18歳で施設を離れなくてはならないと言う法律もありましたが、「外で暮らしてみたい!」と言う子どもたちの気持ちと「そろそろ一人で暮らしてみなさい!」と言う親の気持ちもありました。生まれた時から大きなハンディを背負って始まった彼らの人生ですが、本当に良い子に育ったと思います。それぞれが将来に向かい目的を持ち勉強をし、アルバイトに精を出しています。本格的に自立し社会に出られるまではそれなりの時間が必要だとは思いますが、自立に向け確実な嬉しい一歩が始まりました。
そして6人がホームを離れた後、新たに1歳から2歳半の4人の子どもたちがバーンロムサイにやって来ました。全員HIVには感染しておらず、親が生活苦で育てられなかったり麻薬問題で収監さている等の理由から、縁あってバーンロムサイにやって来ました。麻薬と貧困、この問題がなければ親が自分の手で育てたでしょう。社会にはまだまだ多くの問題が山積しています。でもそんな事と関係なく、子どもたち4人はすでにここの生活に溶け込み、みんなに甘え楽しく暮らし始めています。
いろいろあった2011年でしたが、バーンロムサイの子どもたちは全員確実に成長をしています。エイズを発症することはほぼないでしょう。これは大変な進歩です。開園当初エイズを発症して亡くなってしまった10人の子どもたちの分もしっかりと生きてもらいたいものです。
麻薬と貧困問題には特効薬もなく、世界全体で解決しなくてはならない大きな問題です。バーンロムサイがこの問題とどうむきあって行けばよいのか、何か少しでも役に立てることがあるのか、これから考えてゆかねばなりません。
2012年、今年こそは皆様にとってそして世界にとって良い年でありますよう心より願っております。
昨年一年のご支援ご協力に感謝を申し上げるとともに、まだ先の長い道のりでございますので、どうか皆様方には共に歩んでいただきたくお願い申し上げます。
名取 美和 | 2012/01/01(日)
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