子ども達の「10年」

今から10年前、僕はどんな10年後の未来を思い描いていたのだろうか？僕が初めてバーンロムサイの子どもたちを撮らせてもらったのは2004年10月のことだった。あれから毎年２回、バーンロムサイを訪れては子どもたちの成長を見つづけてきた。

抗HIV剤と呼ばれる血中のHIVウイルスを抑える薬を飲み始めたばかりだった10年前、子どもたちの健康状態はようやく安定し始めていた。ただ死を待つだけではなく（それ以前はHIV母子感染孤児の平均寿命は５歳と言われていた）、自らの力で切り開くことができる明るい未来を手にいれようとしていた。

ちょうどそのころ、僕は当時７歳だった少女プロイと出会った。彼女が９歳のとき、彼女の写真絵本を出版させていただいた。出版後もバーンロムサイのみなさんの暖かい協力のもと、勝手に「父」を名乗ってきた。毎年５月には彼女の誕生日も現地で祝ってきた。プロイは16歳となり、僕たちの関係は10年目を迎えた。

東京日本橋の高島屋で明日から開催される「名取美和とバーンロムサイ」で展示していただいている子どもたちの写真は、先月バーンロムサイで撮影してきたものだ。今回舞踊家として来日しているアームや18歳を超えた子どもたちは現在、バーンロムサイを離れ独り暮らしをしている。男子最年長でチェンマイ大学に通うナットには、僕が直接メールを送り、撮影に来てもらった。なんとそのメールは日本語で書いたものだった。

全く自慢にならないのだが、バーンロムサイに10年間も通いながら僕はほとんどタイ語を話すことができない。プロイに手紙を書こうとタイ語教室に通ったこともあったのだが、全く実践では役に立たっていない。しかし、同じ10年間という月日のなかでナットは日本語を習得し、僕のメールを理解してくれるまでになった。恥ずかしがり屋のナットはあまり自分から日本語を話さないが、本当は聞いて理解できる耳もあるし、話す能力も相当なものだ。。

現在はホームステイ先があるチェンライで工業専門高校に通っているポンも、今回の撮影のためにわざわざバスで数時間もかけてバーンロムサイに里帰りしてくれた。彼の帰りを楽しみに待っていると、ポンのほうが僕を先に見つけ、笑顔で抱きついてきてくれた。昔と全く変わらない人なつこい笑顔がそこにあった。10年前と変わったことと言えば、彼の背丈は僕を追い越し、その人なつこい顔にはヒゲが生えていたことくらいだ。

「名取美和とバーンロムサイ」で展示していただいている写真では、04年に撮影したモノクロポートレイトと一緒に現在の子どもたちを写している。写真にはそれぞれの10年間が写っている。

僕は10年前、日本語を自在に操るナットの成長した姿を想像することすらできなかった。ポンが僕の背丈を追い抜き、ヒゲを生やしている姿も想像できなかった。泣き虫だったプロイが面倒見のよい優しいお姉さんに成長していることも。また、アームが自らの才能を生かし舞踊家として日本に来日することも。

子どもたちはいつだって大人の想像を遥かに上回るスピードで成長している。これからも、僕はバーンロムサイのみなさんに暖かく見守られながら、僕は僕で子どもたちを見守っていきたい。でも次の10年後を想像することはやめておこう、と思う。だって、子どもたちは僕の想像なんてひょいと飛び越えていってしまうのだから。

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東京／日本橋　日本橋髙島屋にて『報道写真とデザインの父　名取洋之助展』と『名取美和とバーンロムサイ』が開催されます！

2013年12月18日（水）より12月29日（日）まで、東京・日本橋の髙島屋東京店（日本橋タカシマヤ）にて、『報道写真とデザインの父　名取洋之助展』と『名取美和とバーンロムサイ』が開催されます。

名取美和が父・洋之助から受け継いだグローバルな精神でスタートさせたバーンロムサイの、その活動の軌跡をパネル等でご紹介しながら、チェンマイの小さな工房から生まれる手作りのオリジナルグッズを販売いたします。


期間： 2013年12月18日（水） ～ 12月29（日）
時間： 10:00　～　20:00（最終日29日は18時まで）
住所： 〒103-8265 東京都中央区日本橋2丁目4番1号
日本橋高島屋　　8階催会場　（※これまでの企画展と違う場所です）
TEL ：03-3211-4111（代）
ホームページ： http://www.takashimaya.co.jp/tokyo/

＊＊＊＊＊名取美和　トークショーとタイ舞踊披露会＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

期間中、1階正面ホールにて、バーンロムサイ代表・名取美和のトークショー
と、バーンロムサイで育ち、タイ舞踊を学んでいる女の子のタイ舞踊披露会
が行われます！　皆様お誘い合わせの上、足をお運びください！

日時：12月18日（水）　／　12月21日（土）
　　　　両日とも11:00からと14:00からの２回。
場所：日本橋高島屋　1階正面（中央通側）ホールにて

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■『報道写真とデザインの父　名取洋之助展』

バーンロムサイ代表・名取美和の父であり、写真家、そして近代日本のジャーナリズムの確立に貢献し、後世名だたる写真家やグラフィック・デザイナーを育てた名取洋之助の作品と業績を紹介した展示会です。
1930年代から1960年代に写された写真作品約150点、そして仲間たちと制作に携わったグラフ誌など資料約100点が展示され、世界を巡り、モダンを愛した名取洋之助の世界を俯瞰する、見応えある展示会です。
『名取美和とバーンロムサイ』と併せてご覧ください。
（主催：朝日新聞社、一般財団法人 日本カメラ財団）

【ギャラリートーク】
日本カメラ博物館運営委員　白山眞理氏
■12月18日（水）・22日（日）
各日とも午後1時・3時

開催期間： 2013年12月18日（水）～ 12月29日（日）　
時間：　10:00 〜19:00 （閉場は20:00）　
　　　　　（※最終日29日は17:30まで／18:00閉場）
場所：〒 103-8265 東京都中央区日本橋2-4-1
日本橋高島屋　8階催会場
tel. 03-3211-4111
入場料：　一般800円／大学・高校生600円／中学生以下無料
（「障害者手帳」をご呈示いただいたご本人様、ならびにご同伴者１名様まで
入場無料とさせていただきます。）
日本橋高島屋ホームページ： http://www.takashimaya.co.jp/tokyo/

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