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鎌倉だより～ギフト～

ギフト。
私の今年の流行語大賞といえるほど、この言葉を巡ってうろうろした1年でした。

ギフトエコノミーという言葉は聞いたことがあるでしょうか。
「与え合いの経済」と訳されます。「信頼がベースにある『愛』に根差した活動で、金銭的な見返りを期待することなく、人のことを自分のことのように考える優しさにあふれた取り組み」（斎藤槙　2015）と説明されたりします。

経済というと、奪い合いのイメージしかありませんでした。利益至上主義の経済が環境破壊や貧困の問題を生み出しています。バーンロムサイが始まった17年前、HIVに母子感染した孤児が急増したのも経済成長という神話にアジアの国々が飲み込まれていったからではないでしょうか。伝統的な農業を基盤とした暮らし→農薬や化学肥料とセットになったF1（次の世代に実をつけない改良（改良？？？）された品種）の種を毎年買い続ける大企業の農業システムに組み込まれる→自給自足の暮らしを維持できない→出稼ぎ→性労働によるHIV感染という図式があったと思います。近年この農業システムに大きな影響を受けているのはインドのコットン農家です。10人に1人が種と農薬・化学肥料を買うための借金を理由に自殺をしているといいます。価格破壊といえるほどの安い洋服を大量生産大量消費している裏にはそんな事実もあります。

今年のはじめ、共生革命家の肩書をもつ友人のソーヤー海くんと話していた時のことです。「ギフトエコノミーの考え方は素晴らしいと思うけど、お金も特技もない私は与えられるものなんてない」と、利益至上主義経済に抵抗しつつもギフトエコノミーも自分とは違う世界と思っていた私に、海くんが言いました。

「ぼくたち、もうギフトたくさん受け取ってるんだよ。水だって酸素だって食べ物だって、生きるのに必要なものは自然からギフトされてるでしょ」

それを聞いて、目から鱗が落ちました。私って、もうたくさん贈り物を受け取って生きてたんだ。そんなに贈り物をもらってる自分ってかけがえのない存在だな。そんな自分がギフトできるものがないわけがない。もう既に、ギフトの循環の中に私もいたのです。そのことに気がついた時に感じたのは、愛や安心感、自分への信頼の感覚でした。

海くんはその後、ギフトで成り立つアメリカパーマカルチャーツアー（ツアー参加者はお金を払わない！）を開催したり、彼の生活自体がギフトで成り立っていたり、ギフトの実験と実践を進行中。先月は鎌倉でもギフトのワークショップをして、50人の人が持ち寄りでごはんを食べ、それぞれのギフトを発見して帰りました。http://tokyourbanpermaculture.blogspot.jp/

たくさんの友人が住む横浜のシェアハウス、ウェル洋光台でもギフトの暮らし方が始まっています。ボランティア管理人の戸谷さんは言います。「贈り合うこと、安心して暮らすことが人間本来の姿だと思うんです」「人は本来贈ることが大好きです。安心できなかったり病んでしまっているからその気持ちが自然に出てこないだけ」
http://greenz.jp/2015/11/17/well_yokodai/

「誰かのために何かするって気持ちいいことなのよ」
バーンロムサイ代表の名取美和の言葉も、いつも胸に響いています。そう、人は本来そういう心を持っているはず。その心が思う存分発揮できれば・・・「そんな気持ちいい社会をつくりたい」バーンロムサイの運営を通して、彼女の目はもっと広い世界に向いていることも感じます。人それぞれ、自分の場所で自分の仕事に最善を尽くすこと、そんな小さなことでしか、大きな世界は変えられないとも思います。

12月に入り、鎌倉の街も奥ゆかしくイルミネーションがきらめいています。
鎌倉店のウィンドーディスプレイも、プレゼントの小箱が積み重なって、なんだかほっこり。