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「最初の冬」

1962年のドイツは何十年ぶりと言われた寒さ、11月の末から雪が降り始め、日本から持って行ったウールのオーバーは何の役に立たず、新たに裏にボアの付いた厚手のオーバーコートと毛皮付きの防寒用ハーフブーツを購入し冬に備えました。

ドイツの家はトイレから廊下、家の隅々までセントラルヒーティングが完備しているので、室内は日本とは比べ物にならないほど暖かいのですが、外の温度がマイナス15度になる日もありこの寒さに東京育ちの私はまずびっくり。暗いうちに新雪の積もった道を駅まで歩き温かい列車に乗った時の嬉しさ。放課後、すでに真っ暗な中、帰途路面電車の中から見えた街中のクリスマス景色の美しかったこと。ショーウィンドーの中は楽しげに飾られほっこりと温かそう、そして街の電飾は蛍光灯ではなくすべて白熱灯の温かい白一色、ミュンヘンの静かなクリスマス風景でした。

普通の家の暖房はヨーロッパのどこも石炭中心、石油はまだそれほど普及していませんでした。そろそろ寒くなる秋口に一冬分の石炭を購入するのですが、どの家の外壁にも投入口があり、石炭運搬車から直接地下の貯蔵庫へ石炭を落とし込みます。私の住んでいた家でも冬の初めに大量の石炭が貯蔵されました。そして冬の間中、日に4,5回ボイラーに石炭を投げ入れ、火を絶やさず燃やし続けると言う仕事が大家父子と男性住人の仕事となるのですが、一冬に1、2回男性が全員留守の夜、私も石炭をくべましたが、これが結構大変、しかしそのおかげで大きな家の隅々まで温まり快適な冬を過ごすことが出来たのです。70年代に入ってからは石油に切り替わったおかげで、バルブの調整とタイマーでボイラーは一冬中燃え続けるようになりました。食料貯蔵庫の隣にあった石炭貯蔵庫が消え石油貯蔵用のステンレスタンクがデンと置かれ、そこをねぐらにしていた黒猫も姿を消してしまいました。

パリやロンドンの都市でも何百年と燃やし続けた石炭の煤のせいで、建物は真っ黒になってしまいましたが、石油が普及し始めた50年代中頃から建物の大々的な洗浄がはじまり、建物が元の明るい色を取り戻し始めたし、ちょっと寂しいのですが有名なあのロンドンのポタージュのような霧もなくなりました。
それと共に真っ黒な衣装に身を包み、すすで真っ黒な顔をした煙突掃除屋さんの姿も少なくなりました。煙突掃除屋さんを見た日は良いことがある、と言われていましたが、、

私の住んでいた家でも12月の中ごろからクリスマスの準備がはじまりました。天井の高い広い居間の真ん中のグランドピアノの横に、庭から切り出した3メートル程のモミの木が運び込まれ飾り付けが始まったのは二十日過ぎ。もともとこの家を建てたのは彫刻家、その娘婿も彫刻家、店子の一人が同じく彫刻家、クリスマス飾りは彼らの作った木彫りの飾りと、ひいひいおじいさんの代から使われていた銀色のガラス玉、そして庭になっていた小ぶりのリンゴを紐で釣るし、何十本もの白いろうそくを枝に立てたシンプルで素敵なクリスマスツリーでした。

また、クリスマスの為に庭で収穫した花梨の実を煮詰め、固めのジェリーを作るのですが、これが美味しい!作り立ては柔らかいのでクリスマスまでに食堂の食器棚の上に載せ乾燥させるのですが、夜中に大家の息子と何度もこっそりと椅子に乗りまだ固まりきらないジェリーをつまみ食いした事か、、、もう一度食べたいものの一つです

そして、いよいよ初めてのドイツでのクリスマスの日!外は真っ白。クリスマスツリーにろうそくが灯されました。モミの木、ろうそくとリンゴの匂い、温められた赤ワインとシナモンの香り!!ちょっとだけオシャレをした住人たちが夕食後居間に集まり、本やレコードが中心の質素なプレゼントの交換があり、住人の友人のピアニストがピアノを奏でる、、、華やぎはないのですが何とも気持ちの質実剛健まさにドイツのクリスマスでした。
夜も更け部屋に戻るために庭に出た時のあのキーンとした空気と雪の匂い、今でも懐かしく思いだします。

そして26日の朝からは学校の友人の車で北イタリー・ドロミテ地方の山小屋へ山スキーに行きました。車を駐車したところからは馬橇に荷物を乗せ、私たち4人は真っ白な景色の中一時間ほど歩いてたどり着いた所には、ただその小屋一軒が建っているだけ、宿泊客もみんなで10人ほど。リフトもなく滑っては歩いて上る、、滑っては上る、、歩く、、、初めての山スキー体験でした。その山小屋の食事は美味しく、朝は搾りたての牛乳で作ったココア、焼き立てのパン、自家製のジャムにバター、、、、昼も夜も何とも美味しく信じられないほどよく食べ、、、1週間で5キロも太りスキーズボンのウエストが閉まらなくなり、安全ピンで止めてミュンヘンに戻ってきました、、、、16歳の冬でした。

それから49回目の冬、今年12月24日はバーンロムサイのクリスマス会です。

「ちょっと、きついなぁ」

名取 美和 | 2011/12/15(木)

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