ケンチャン
ケンチャンが行方不明になってもう5日がたちます。
先日ケンチャンの母親のダムが老衰で死んだばかり。ダムが推定15歳だとするとケンチャンはおそらく13歳。もうおじいさんだったので、ダムと同じようにいつかは老衰で死んでしまうだろうとは思っていましたし、そうしたらダムの横に埋めてあげようと決めていたのに、まさかの行方不明です。
名取の飼い猫やホームの猫もすでに10匹以上が行方不明になったり、死んでしまいました。大工さん達に話しを聞くと、ウサギ狩りで間違えて(?)撃たれたり、養鶏を生業にしている所では、犬が鶏を追いかけたり噛み殺したりしてしまうので、入って来た犬を殺すために自分の土地に毒の入った食べ物を置いてあるのだそうです。鶏を飼っている人も生活がかかっているので・・とは思いつつ、それを食べて死んでしまう犬や猫がどれだけ苦しむか。かつて毒を食べてものすごく苦しんだ犬を見ている名取から話しを聞くたびに、背筋がぞっとし、胸が苦しくなります。
もう一つ、ここからもう少し南下した地域では、市場で犬肉を売っているらしく、「それも可能性としてはあるかも・・」と言われ、なんとも気の重い日々が続いているのです。
私も亜紀さんと一緒にホームのまわりを探しましたし、さらに大工さんたち全員にかなり奥まった所までくまなく探してもらいましたが、見つかりませんでした。そしてここ最近ホームのまわりの犬の数がめっきり減っています。地元のチャイさんが知っている限り2匹が行方不明。噂では、すぐ近くのラムヤイ林の持ち主がその中で飼っている数羽の鶏を守るため、魚や肉に毒を盛って置いているということですが、自分の土地の中でやる事は法律に触れませんし、たとえ法律に触れる証拠があったとしても名取が色々と調べたところ、罰金1000バーツ(約2700円)で終わりとなってしまうそうです。また行方不明になった犬の持ち主(タイ人)も、そうシリアスに捉えていないとのこと。この状況を改善する策としては、自分の飼っている動物を外に出さないこと、それしかないのです。今のタイの国では・・・。
この怒りの矛先を何処にも向けることができません。
頭では、もうケンチャンは死んでしまったと分かってはいるのですが、突然あの片目で見上げるケンチャンがひょっこり帰って来て明日の朝はホームの芝生に居るのでは・・と思いながら、新しい日を迎えるので、そろそろ区切りをつけるためにも日記に書きました。
母のダムが死んでから、今まであまり来なかった裏の敷地まで早朝からケンチャンが来ていることが何度もありました。チャイさん曰く、ダムを探しに来ていると思うと・・。あまり遠くへ行かなかった足の悪いケンチャンが、裏の方まで来る途中に早朝さらわれたか、毒を食べてしまったか・・・。
とっても悲しいです、寂しいです、悔しいです。
先週の日曜日は子どもたちもホームの中を「ケンチャ~ン!!」と声を張り上げて探しまわりました。学校から帰って来ると「ケンチャン見つかった?」と聞いてきます。バーンロムサイで生まれ、バーンロムサイと同じ時代を生きて来たケンチャン。病気で片目を失い、足も悪く、満身創痍だったけれど、でも良く食べ、人懐っこくて、すぐ人の顔をなめる甘えん坊でした。
ボランティアやスタッフ、そしてバーンロムサイに来てくださったたくさんの方々に可愛がってもらったケンチャン。
今はお母さんのダムと一緒に居て、怖い花火の音も、雷の音も無いところで、きっと幸せなのだと思います。そう思うようにしています。
ケンチャン、ダムとともに安らかに。
麻生 賀津子 | 2012/11/05(月)
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