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新年あけましておめでとうございます。

バーンロムサイ開園から14回目のお正月を迎えました。

命を守る事を第一に考え日々過ごしていた開園当初、エイズ患者の数はタイ国内でも100万人を超え、HIVに母子感染して生まれてきた子の数は7万5千人、そして子どもたちは平均2歳で孤児となり、その寿命は5歳と言われていました。そして残念ながら開園から2年半の間にバーンロムサイでも10の小さな命が消えてゆきました。しかし2002年から始めた抗HIV療法と、多くの皆様方に支えられ現在2歳から18歳までの26名の子どもたちが園内で元気に暮らしております。ここまで来られたことに、まずは皆様に心より感謝申し上げます。

開園から5ヶ月後の2000年3月から始めたバーンロムサイの写真日記も膨大なページ数となりました。日々の暮らしでの出来事、楽しいこと、悲しいこと、辛かったこと、面白かったこと、いろいろな出来事をスタッフそしてボランティア共々綴ってまいりましたが、子どもたちのプライバシーと彼らの将来を鑑み、日記で皆さまにはお伝えできなかった事も多くありました。しかしこれらの出来事もバーンロムサイが直面してきた事実です。多少の時も過ぎましたのでそれらの出来事のいくつかをご報告させて頂きます。

一昨年の初夏から18歳を過ぎた子どもたち7人が私どもの経済的な支援の下、園外で一人暮らしを始めました。親の期待通りに子どもは育たないとはわかってはいましたが、女の子1人と男の子2人がバーンロムサイから離れてゆきました。学校に通い勉強をしている間の教育費と生活費はバーンロムサイが支援してゆく、ただし勉強を中断したらその支援は打ち切ると何回も彼らに話し、約束をしていのですが、残念ながら彼ら3人は不登校となり退学させられてしまいました。

その中の一人21歳のMはあと一年で高校終了と言うところまで来て、学校に通わなくなってしまいました。不登校になった理由はいろいろ考えられますが、最終的には好きな人ができ、彼の家族と一緒に暮らしはじめたのです。Mの感染を知ったうえで彼は付き合っています。二人で主治医のもとを訪ねHIVについて、また注意するべき点を聞きに行ったそうです。それはそれで素晴らしいことですし21歳を過ぎた彼女を無理やり学校に通わすこともできません。これは大人となった彼女が自ら選んだ道、ここまで永らえた命を大切に、幸せに生きていって欲しいと願うのみです。

そして小さい時から自動車修理工になりたかったN、何故学業を途中で投げ出してしまったのか、、、彼の場合は不可解な事が多く、いまだにはっきりとした理由はわかりません。今は学校の夏休み中アルバイトをしていたトマト農家で働いているとの事。またいつか学校に戻りたくなることもあるかと、学校には「休学届」を出しておいてあります。

小さい時から創造力にあふれその将来が楽しみだったS、中学からタイ舞踊の専門中学校に通った彼は踊りの才能は抜群。しかし全く勉強が出来ず中学3年で落第、バーンロムサイのタイ人スタッフが留年した彼を、一年間根気よくサポートしなんとか一年遅れで中学は卒業できたのですが、そのままタイ舞踊の専門高校への進学はできず、試験を受ければ誰でも入れる普通高校に入学。しかし私どもへ届いたSの一年生前期の成績表は「すべての科目が0点」でした。学校に行ってもほとんど授業に出ておらず試験も受けていなかったとの事。自由を謳歌しすぎたのか、結果退学。彼には姉をはじめ親戚がいます。もしかしてそこで暮らすことを考えているのか、バーンロムサイのクリスマスパーティーに来るようにと誘ったのですが、今のところ音信不通。

園外で暮らす他の4人は現在チェンマイ大学、メージョウ大学、タイ舞踊専門高校、そして普通高校で勉強をしています。7人のうち3人が途中で脱落してしまったことは残念な事でもあると同時に親としてうまく導けなかった悔しさとある種の怒りも感じています。今は「親」であるバーンロムサイを煙ったいと思っているのでしょうが、この難しい時期を乗り越えるたら、また今までのように弟や妹たちそしてバーンロムサイとつながっていてほしいと願っています。彼らの職場にと考え稼働中の縫製場やゲストハウス、小さな農園はいつでも彼らを受け入れる準備は整っています。

そのような中、昨年とても嬉しいことがありました。4年ほど前、園外で事件を起こし、ホームにとどめておくことが難しくなり、チェンライと言う町の叔母のもとへと去っていった当時16歳のKが10月のある晩、突然私の家を訪ねて来てくれたのです。20歳となり身長は1m78cm、素敵な青年へと成長していました。彼がホームを離れざるを得なかった事件は、彼がHIVに感染していると言う事も絡んでおり不条理な事件でした。ホームを離れた後Kは麻薬所持で二回も拘留され「何回も来たいと思ったけれど怖くて来られなかった、、」でも勇気を出し訪ねて来てくれたのです。今では彼の感染の事実を知っているガールフレンドもおり、市内のレストランで住み込み従業員として働いています。子どもの頃と同じチャーミングな笑顔で「メー美和!」と私を抱きしめてくれた時、心からうれしかった!小さな時からいろいろな悪さをしてきたSですが、バカな事をしてしまったと思っていると言った彼の言葉を信じ、、、、何はともあれ元気で生きていてほしいと祈る気持ちです。

生きてさえいればまた会えるし、何か困った時、助けてほしい時、「バーンロムサイがある」と子どもたちが心の片隅で思っていてくれればそれでよいのです。ただでさえ人生は思ったように進まない上に、HIVに母子感染してしまった彼らが、心地よく楽しいと思える日々を一日でも多く生きていくことが出来ればそれでよし!多くは望みません。

バーンロムサイの運営を持続可能にして下さっている支援者の皆様、また今年一年、いろいろな事が起きるでしょう、どうかこれからも子どもたちの成長を見守り、バーンロムサイが子どもたちの為にいつまでも存続できますよう、ともに歩んでくださいますよう、心よりお願い申し上げます。

2013年が穏やかで、明るく、希望の持てる年であるようにと願っています。


  
星になった10人の子どもたちに、とどきますように!
  
  

名取 美和 | 2013/01/01(火)

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