ちびっ子達の近況、これからの課題
近頃、一段とにぎやかになってきた「ちびっこ部屋」。お昼寝の時間が終わり、幼稚園組がホームに帰って来る頃には「わーわー!!」「きゃー!きゃー!!」とスタッフのいるオフィスまで元気な声が聞こえてきます。
2年前の11月、1年前の3月、そして今年の1月に新しい子ども達が入園し、気付けば「ちびっこ組」だけで9人!少し前までは大きなお兄さん、お姉さんに遠慮のあった「ちびっこ組」ですが、ホームでの生活にすっかり慣れた最近は「一大勢力」として存在感が増してきました。みな、可愛い盛りですから、列を作って歩いてるだけで、スタッフもついつい「にっこり」。最近は語彙も増えてきたようで、日本語も覚え始めました。朝、出勤すると「おはよー!」、夕方帰ろうとすると「おやすみー!」。ちゃんと意味も分かっているようです。
奇跡的に「整列」した1枚!
最近流行っている「汽車ぽっぽ」ごっこ
間もなくホームページの「子ども達紹介」も更新予定ですが、まだホームページでは紹介されていない今年1月入園組のちびっ子4人の成長ぶり、最近の様子などをご紹介します。
まずは双子の兄弟、チャイとチョーク。この2人は一見見分けがつかないほど、顔も、背丈も、表情も本当にそっくり。唯一、チョークの鼻の近くに小さなホクロがあり、大人たちはその特徴でなんとか(?)2人を見分けています。
そっくりな双子兄弟
写真のように「困り顔」がトレードマークの2人ですが、最近は歌やダンスを覚えて、ニコニコとご機嫌に過ごす時間が増えてきました。人懐っこい性格なので、ホームのお兄さん、お姉さんにも、とても大切にされています。最近は食欲も旺盛で、モリモリご飯を食べた後に、2人で3本ものバナナを完食したとか…。
弟チャイ
兄チョーク
チャイもチョークもお互いの事が大好きなので、食べる時も、遊ぶ時も、寝る時もいつも一緒。そっくりの2人が仲良く寄り添っている姿は、なんとも言えず、、愛らしいです。また最近は「チャイは手を挙げて!」「チョークはいますかー?」と声をかけると、元気に「はーい!」と返事をするようになり、2人を頑張って見分ける必要が無くなりました。
双子のチャイとチョークのお兄さんがノン。入園日初日に「板前に似ている!」とスタッフに言わしめたノンは確かに少し「オジさん顔」。まだまだ甘え盛りなのですが、体つきもしっかりしているノンに抱っこをせがまれると、なんだか少しドキっとしてしまいます。。
板前にそっくり!?ノン
保母たちいわく「easy going」な性格で、日々を快適に過ごし、健やかに成長しているようです。着替えなどはもう1人で出来るものの、時おり前と後ろが逆になっていたり。まだ4歳ですから、それもご愛嬌。チャイとチョークのことはとても大切に思っていて、お兄さんらしく、いつも2人を気にかけているそう。
3人の兄弟は「モン族」という山岳民族の出身です。母親は16歳でノンを、17歳でチョークとチャイを産み、2人の出産の際に17歳の若さで亡くなっているそうです。母親は貧困の中で生活していた可能性が高く、リスクを伴う双子の出産で十分な医療を受けられなかったのかもしれません。村を離れ、出稼ぎに出る山岳民族の若者は増えていますが、山岳民族に対する差別と偏見は未だに根強いものがあります。彼らに十分な就職口が無いことも、現在のタイ社会が抱える問題の1つです。
4歳で入園したセンダーオは「星の光」という美しい名前を持つ女の子。お片づけや着替えなど、自分のことはなんでも自分で出来るしっかり者で、よく年下の弟や妹の面倒を見ています。歌も大好きのようですが、特にお絵描きが得意で、その色使いはとても美しいと保母達の間では評判になっています。
女の子らしいセンダーオ
くるっとカールしたまつげがチャームポイント
最近はタイ文字も覚えたため、幼稚園に通う日を心待ちにしているセンダーオですが、彼女は未だに幼稚園に通う事が出来ていません。実は彼女もミャンマーの「タイヤイ族」という少数民族の出身で、彼女の母親も、センダーオ自身もタイのID(国民証)を持っていないのです。タイではこのIDが無ければ、学校に通う事も、医療機関で診察を受ける事も、家や車を買うことも出来ません。以前、タイにあるミャンマー難民や少数民族を対象としたクリニックを訪問したことがありますが、IDが無いために大きな病院へ行く事が出来ず、命を落とす患者がたくさんいる現状を目の当たりにしました。
近年は少数民族出身であってもタイのIDを取得出来るように法律が緩和されていますが、取得に当たっては、「町の病院で出生していること」「高等教育を修学出来ること」などいくつかの条件があり、現金収入の少ない山岳民族は取得を諦めてしまう事も多いと言います。センダーオは今、このIDを取得出来るように、タイ人のスタッフが役所に掛け合っているところ。1日も早く彼女を幼稚園に通わせてあげたいと願うばかりです。
平和なお昼寝
ちびっ子たち9人は、皆HIVには感染していませんが「貧困」「麻薬」「少数民族問題」など、現在のタイの社会問題を反映する形で、孤児院に預けられた子ども達です。問題の根は深いですが、十分な教育や医療を受けられるように基盤を整えると共に、啓発教育や地域プロジェクトにも地道に取り組まなくてはなりません。そして、タイ社会の中で自立して生活していけるよう、彼ら自身にもしっかりと「生きる力」を身につけてもらわなくては…。ちびっ子達の元気な姿を見るたび、これから先10年の課題も、ひしひしと感じています。
谷岡 碧 | 2013/07/18(木)
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