双子のオイとアイ、チョークとチャイ
1999年、開園と同時に入園してきた双子の女の子のオイとアイ。
1993年11月生まれでしたから生きていれば今年の11月で20歳。
開園から一年目の2000年11月、オイがエイズで亡くなり、その3ヵ月後姉の後を追うように逝ってしまった妹アイ。共に享年7歳。
父親がエイズで死亡、その後母親は双子の娘たちを自分の妹に託しやはりエイズで死去。オイ、アイの叔母であるその妹もご主人をエイズで亡くし、彼女自身もご主人からHIVに感染、それが理由で仕事もなく育てることが出来ず、やむなく国立孤児院に預け、そこから二人はバーンロムサイにやってきました。おしゃまでキラキラとしたきれいなものが大好きだったオイとアイ。夕食後、寝るまでのひと時タイポップスに合わせパジャマ姿で踊っていた二人の姿が今でも目に浮かびます。生きていれば20歳、、、
元気だった姉妹はほぼ同時にエイズを発症、アッと言う間に痩せ衰え姉のオイがチェンマイの入院先の病院で亡くなり、その後アイも同じ病院に入院しましたが叔母が何としても最後の時をファーン県の実家でアイと過ごしたいと彼女を引き取り、最後の数週間アイは大好きな叔母と祖父と共に生まれ育った実家で過ごすことができました。
実家での葬儀に参列しましたが、オイとアイの母方のその祖父は、孫二人以前に娘と婿、もう一人の娘婿をエイズで亡くし、同居していた7人家族のうち5人がエイズで亡くなり、唯一残されたのは下の娘だけ。今から12年前の「エイズの悲劇」の一つです。
そして12年後の先月、2歳7か月の双子の男の子チョークとチャイが一つ上のノン兄さんと共に入園してきました。彼らはモン族。原因はわかりませんが母親は17歳で他界、父親は行方不明。一緒に入園してきた4歳の女の子ダオの母親はミャンマーのタイヤイ族、「統合失調症」で娘を育てることが出来ず彼女自身も施設に収容されています。
昨年入園してきた子どもたちの親たちもそれぞれ「貧困」「麻薬問題」を抱え子どもたちを育てることが出来ません。
女性が若くして子どもを産むのは多くの山岳民族としては不思議な事ではありません。しかし一昔前の様な村での自給自足に近い大家族の相互援助のもと成り立っていた生活様式が様変わりしているのも事実。現金収入を求め村と言うコミュニティから離れ町に出稼ぎにきた若者たちは、今日を生きるためだけの辛い暮らしに生活は一変、彼ら山岳民族に対する差別と偏見もそこに加わり多くの問題が生まれてきています。
抗HIV療法のお蔭でHIVに母子感染して生まれてくる子どもたちの数はタイ国内では嬉しいことに減少しつづけています。しかし「精神障害」「貧困」「麻薬」問題を抱えた親たちが子どもたちを育てることが出来ず、施設に預けざるを得ない状況も増えてきています。これは何も東南アジアや開発途上国だけの問題ではありません。日本でも「精神障害」「貧困」が原因で子どもたちを育てられなかったり、虐待をしてしまう親の数が増えていると聞きます。日本国内の養護施設には孤児はほとんどおらず、親が何らかの理由で育てられない子どもたちが大半を占めているとの事。
先週入園してきたダオは亡くなったオイとアイにとても似ています。そして双子のチョークとチャイを見て、、、あの頃のことを思い出しました。
そして新たな課題が突き付けられた気がしています。
名取美和 | 2013/02/01(金)
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