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パガヨーの森

友人の友人の名前はクイ君。30歳のパガヨー(カレン族)の青年です。先日友人が彼の村に連れていってくれました。村の森の中でコーヒー果実摘みをするためです。

30年前に王室プロジェクトで芥子栽培にかわるものとしてクイ君たちの村にも野菜や果物と一緒にコーヒーが入ってきました。しかし当時コーヒーなど飲んだことのないカレン族の人たちはあまりコーヒー栽培に興味をもたずそのままにしていたのですが、だんだんコーヒーを飲む人が村の中にも出てきて、あらためてコーヒー栽培に興味をもったそうです。それが3年前。つまり森の中に放置してあったコーヒーの木は30年近く毎年毎年コーヒーの実をつけて自然に育っていたのです。その後若者を中心に試行錯誤と勉強を重ね、今にいたっているとのこと。

カレン族はタイの山岳民族の中で一番たくさんいます。大きく分けると4つのグループとなり、パガヨーは一般的に「スゴー・カレン」と呼ばれるグループで、彼らもまた自然と共生し、自分たちの伝統文化を大事に守り、誇りに思い、年長者たちが若者に伝承しています。
クイ君の家は質素で清潔。これは山岳民族の家に行くといつも感じることです。見習いたい・・・。

早速目に入ったズッキーニ。 新鮮で美味しそう

              黒い子豚がたくさん。 今は亡きぶーちゃんを思い出します。カワイイ!
クイ君の家で美味しいコーヒーをまずご馳走になりました。私はコーヒーの酸味に弱いのですが、彼らの森のコーヒーはコクと苦味が程よく、とても美味しいコーヒーでした。

このオーガニックコーヒーは、村人たちが森で摘んだ実の外側の果実を水につけて剥がし、数日水につけてぬめりを取って、さらに4~5回洗うという作業の後に、天日に1週間から2週間干すという、麻袋に入れて保存するまですでに相当手間のかかる作業です。その後焙煎前に薄皮をとり・・という、このコーヒーが飲めるまでに丁寧で大変な手作業がこんなにあることを実感すると、ますますありがたく美味しく感じます。

家の脇で干してある豆を見せてもらいました。山の乾季は平地より寒いうえに、時には殆どクイ君が一人でやることもあるそうです。大変だけれどもたくさん収穫できれば出来るほど、知りたいことが増えて、もっと色々勉強したいとクイ君は熱く語っていました。

天日干し

この状態になるまでが大変な作業

棚田を超え、川を渡り、30分ほど山を登ると森の木の木陰にコーヒーの実をつけた低い木が自然にたくさんはえています。村人が木を一本も切らずに守っている大切なエリアだそうです。ここに辿りつくまで山の水や森の守り方など、自然と共存しているからこその様々なクイ君の知識に、素直に感動。

クイ君の後をついて・・

自然のままの森の中にはえるコーヒーの木(背の低い木)

まずは収穫前に腹ごしらえ。全部クイ君の手作り。
途中、土から飛び出ていた赤い花。ご飯と特製ナンプリック(ディップ)と一緒に食べます。

土から取り出し →

ご飯と一緒に食べて、美味!

クイ君は相当な料理上手です。
写真にはないですがおにぎりもキレイに握っているし、カボチャはホクホク、梅干しや沢庵も美味しくつかっていて、どれもこれも美味。さらに森のコーヒーを手作りの竹のコップで、その森で飲む。
贅沢の極みです。

絶品!!! パガヨー伝統のおかゆ

あのズッキーニは卵炒めに

沢蟹入り、唐辛子ディップは必須アイテム

クイ君流キムチ風味のキャベツ

しあわせ。森のコーヒー



感動の昼食後、正しいコーヒー果実の摘み方を習い、赤く熟したものだけを収穫してゆきます。クイ君に比べると相当遅いですが、やり始めると楽しい! 自生している木々の中を皆で黙々と摘みました。

赤い熟した果実だけを摘み取ります

収穫! 果実はほんのり甘みがあります


少しはお役に立ったのかどうかは分かりませんが、果実を収穫し、家に帰るとクイ君特製の梅酒が!これもまた日本の家庭の味で美味。初めての陶芸で作ったというおちょこも飲みやすく、彼はなかなかのセンスの持ち主なのです。
パガヨーは300年もの昔からこの土地に住み、森と自然と共に生きてきているので、誰よりも森のことを知っているし、どうやったら山の水を、森の自然を守ることが出来るかも長年の経験と知恵でわかっているのです。でもタイでは、彼らの知識をまるで無視し、伝統的な焼畑農法は自然破壊だと決めつけ、その土地から数百年住んでいた少数民族を追い出すということも起きているのが現実です。その追い出したタイ人はビニールを捨て、燃やし、車に乗って排気ガスを撒き散らし、自然破壊のお手本のような人なのだろうと思います。

クイ君の村はほぼ自給自足の生活ですが、どうしても教育費など現金収入は時代の流れとともに必要となり、コーヒー栽培はこれから先さらに充実したものにしてゆく必要があります。でもそのために他のコーヒー栽培をしている所のように森を切り開くことはせず、共に生きてきた森と自然を守りながら、美味しいコーヒー作りをしてゆきたいというのがクイ君の村の方針。

「僕たちのコーヒーはお金のある人にもない人にも飲んで欲しいし、パガヨーが森や自然を大切にして共に暮らしていることを、この森のコーヒーを通じて多くのタイ人に知って欲しい」と語るクイ君。

これからもっとコーヒーについて多くのことを学び、経験を積んで、美味しいコーヒーを作りたいと話す彼の目はキラキラ! 

今回彼と森を歩くことであらためて学んだことはたくさんあります。
「自然を守る」という言葉だけが一人歩きするのではなく、自分の身近な小さなことからでも気にかけて生活してゆこうとあらためて思ったパガヨーの森での1日でした。

麻生 賀津子 | 2014/01/11(土)

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